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column お役立ちコラム

2026.08.07

自治体の防災拠点に太陽熱給湯が必要な理由

約3か月
能登で断水が続いた地域も
片道2〜3時間
入浴のために移動した距離
週3回
それが何か月も続いた

2024年1月1日、能登半島を大きな地震が襲いました。あれから約2年半が経ちます。ライフラインの復旧、仮設住宅への移転、そして少しずつ進む街の再建——被災地は今、「復旧」から「復興」へとフェーズを移しつつあります。しかしその過程で、私たちはある問いを突きつけられています。「お湯は、生活インフラである」——この当たり前のことを、日本の防災計画はどれだけ真剣に考えてきたのか。自治体・公共施設の担当者に向けて、現地の声とともに考えます。

復興の風景

震災が教えてくれたこと

石川県から富山県まで、入浴のために車を走らせた人たち

現地の声を直接聞いた方から、こんな話を伺いました。

能登半島地震では、電気の復旧は比較的早かった地区でも、断水が約3か月にわたって続いた地域がありました。水道が止まっているということは、当然お風呂にも入れません。シャワーも使えない。体を清潔に保つという、人として最低限の営みが、長期間にわたって奪われたのです。

その間、被災者の方々はどうしていたか。石川県から富山県まで、片道2〜3時間をかけて入浴施設に通っていた方がいました。しかもそれを、週に3回程度、何か月も続けていたというのです。

片道2〜3時間。往復4〜6時間。それを週3回。仮設住宅での生活を送りながら、それだけの時間とエネルギーを「お風呂に入る」ためだけに費やし続けた方がいる——この事実を前にしたとき、「お湯は贅沢品だ」という言葉は、誰も口にできないはずです。

⚠ 現地で聞いた声(実際のエピソード)
断水が続いた地域では、約3か月間お湯が使えない生活が続いた
電気は比較的早く復旧したが、断水の影響はそれをはるかに上回った
入浴のために石川県から富山県まで片道2〜3時間かけて通った
それを週3回程度、何か月も続けた方がいた

電気よりも、断水の方が生活へのダメージは大きかった

能登半島地震が私たちに突きつけた重要な教訓のひとつが、「ライフラインの中でも、断水の長期化が生活に与えるダメージは特に深刻だ」という事実です。

停電は辛いですが、電気は比較的早期に復旧します。スマートフォンさえあれば情報収集もできる。しかし水道が止まると、飲み水はもちろん、調理、トイレ、洗顔、そして入浴——日常のあらゆる営みが根底から揺らぎます。

そしてその中でも、「清潔にお湯を使えること」の欠如は、被災者の精神的な疲弊にも直結しました。温かいお風呂に入れないことで、睡眠の質が落ちる。体の汚れを落とせないことで、感染症リスクが高まる。人としての尊厳を保てないことへのストレスが蓄積する——これらは数字では見えにくい被害ですが、確実に被災者の心身を蝕んでいきます。

防災の専門家の間では「断水対策こそ最重要課題」という認識が近年急速に高まっています。しかしながら、多くの自治体の防災計画において、「給湯」——つまりお湯の確保——は、まだ十分に位置づけられていないのが現状です。

なぜお湯が「生活インフラ」なのか

お湯がないと、何ができなくなるのか

「お湯は贅沢品」という感覚は、今の日本では成立しません。現代の生活においてお湯は、電気や水道と並ぶ生活インフラです。試しに、「お湯が一切使えない状態」で24時間を過ごすことを想像してみてください。

朝起きて、洗顔できない。食器を洗えない。赤ちゃんのミルクを適切な温度で作れない。体の不自由な方の清拭ができない。夜、疲れた体を温めるお風呂に入れない。寒い避難所で、一杯の温かいお茶すら作れない——これらのどれが「贅沢」だと言えるでしょうか。

特に公共施設が避難所として機能するとき、高齢者・乳幼児・障がいのある方・体調不良の方にとって、「温かいお湯が使えるか否か」は、生命に直結する問題です。避難所での感染症集団発生の多くは、手洗い・清拭などの衛生環境の悪化から始まります。

💡 「お湯が使えない」ことで起きること
衛生面:手洗い・清拭・洗浄の質が低下し、感染症リスクが上昇
栄養面:温かい食事の提供が困難になり、体力・免疫力が低下
心理面:入浴できないことによる精神的ストレス・尊厳の喪失
医療面:高齢者・乳幼児・障がい者への清拭・ケアが困難に

「復旧」と「復興」の間にある、見えない課題

能登半島地震から約2年半。被災地は今、大きなフェーズの転換点にいます。

「復旧」とは、壊れたものを元の状態に戻すことです。電気・ガス・水道を復旧させ、道路を修復し、住宅を再建する——これは「元の状態への回帰」です。しかし「復興」は違います。復興とは、震災前よりも強く、より安心して暮らせる地域をつくることです。

そのとき重要になるのが「次の災害に備えること」です。復旧が完了した今こそ、「あの時、何が最も辛かったか」を正直に振り返り、その課題を次の備えに活かすタイミングです。

能登の経験が示したのは、「断水時にお湯を確保できる仕組みを、平常時から整えておくことが必要だ」ということです。しかし多くの公共施設では、給湯設備は「日常的に使うもの」として存在しているだけで、「非常時に機能するかどうか」という視点で設計されていません。

避難所での生活イメージ

自治体が考えるべき「新しい防災」

「使いながら備える」という発想への転換

従来の防災備蓄は「もしものために用意しておく」という発想が中心でした。非常食、備蓄水、毛布、発電機——これらは平常時には使わず、倉庫に眠り、定期的な更新コストだけが発生します。

しかし、これからの防災設備に求められるのは「平常時にも使いながら、非常時にも機能する」という二重の価値です。コミュニティセンターや公民館など、地域の人々が日常的に利用する公共施設が、そのまま防災拠点としても機能できること——この「使いながら備える」発想への転換が、自治体の防災計画に求められています。

その観点から注目されているのが、日常的な給湯機能と、非常時の生活用水確保を同時に実現できる設備の整備です。

公共施設の「給湯」を防災の文脈で捉え直す

これまで公共施設における「給湯設備」は、施設利用者が手を洗ったり、調理室でお湯を使ったりするための設備として位置づけられてきました。防災拠点としての機能を考えるとき、多くの自治体は「食料の備蓄」「発電機の設置」「通信設備の整備」を優先しますが、「お湯の確保」はその優先リストに入っていないことが多いのが現状です。

しかし能登の経験が示したように、長期の断水・停電が続く状況において、避難者にとって最も切実なニーズのひとつは「温かいお湯が使えること」です。

このことは、国内外の災害支援の現場でも繰り返し確認されています。避難所で最初に届けられる支援物資として、おにぎりと並んでカップラーメン(=お湯が必要な食品)が喜ばれる理由は、「温かいものが食べたい」という人間の根本的な欲求があるからです。それは贅沢でも我慢できるものでもなく、人としての尊厳を保つために必要なことです。

自治体・公共施設担当者が今考えるべき問い

防災月間を迎えるにあたり、自治体・公共施設の担当者の皆様に、以下の問いを改めて考えていただきたいと思います。

🛡️ 防災担当者に考えてほしい問い
① あなたの施設は防災拠点として指定されていますか?
② 断水が3か月続いた場合、その施設で避難者にお湯を提供できますか?
③ 停電時でも給湯機能を維持できる設備がありますか?
④ 給湯設備の整備は、防災計画の中に明示的に位置づけられていますか?
⑤ 平常時にも使いながら、非常時にも機能する給湯設備を選んでいますか?

「そこまで考えていなかった」という担当者の方も多いかもしれません。しかしそれは、これまでの防災計画の「盲点」であり、能登の経験が示した課題です。

電気・ガス・水道が同時に止まるような大規模災害において、ライフラインに依存しない形でお湯を確保する手段——自然エネルギーを活用した給湯設備の整備が、これからの公共施設の防災計画に求められています。

エネルギー源として太陽熱を活用する場合、ガスや電力の供給が止まった状況でも、太陽が出ていれば給湯機能を維持できる可能性があります。また、タンクに蓄えられたお湯は、断水時の生活用水としても活用できます。「平常時に光熱費を削減しながら、非常時には水とお湯を確保できる」——そうした設備の整備が、自治体にとって現実的な選択肢として浮上しています。

コミュニティセンターの外観

まとめ:「お湯は生活インフラ」という認識が、防災を変える

能登半島地震から約2年半。被災地が「復旧」から「復興」へと歩みを進める中で、私たちは重要な教訓を受け取っています。

お湯は贅沢品ではありません。電気・ガス・水道と並ぶ、現代の生活インフラです。石川県から富山県まで片道2〜3時間かけて入浴に通い続けた被災者の姿は、「お湯が使えない」ことがいかに人の生活と尊厳を傷つけるかを、私たちに静かに教えています。

自治体・公共施設の防災計画において、「給湯の確保」はこれまで優先順位が低く置かれてきました。しかし今こそ、「平常時にも使いながら、非常時にも機能する給湯設備」を、防災計画の中心的な要素として位置づけるタイミングです。

9月の防災月間を機に、あなたの施設の給湯環境を見直してみてください。

📌 今回のコラムのポイント整理
能登半島地震では断水が約3か月続いた地域があり、停電より生活へのダメージが大きかった
入浴のために県をまたいで片道2〜3時間移動を週3回続けた方がいた
お湯は贅沢ではなく、衛生・栄養・心理すべてに関わる生活インフラである
復興期の今こそ「使いながら備える」給湯設備の整備を防災計画に盛り込む必要がある
自治体・公共施設には「平常時も非常時も機能する給湯設備」の整備が求められている

次回のコラムでは、公共施設・コミュニティセンターへ太陽熱給湯システムを導入することの具体的なメリットについて詳しくお伝えします。能登半島地震の復興支援として実際に七尾市へ寄贈された事例もご紹介する予定です。

📣 関連お知らせ
マルヤス工業株式会社は、能登半島地震の復興支援として、石川県七尾市の公共施設2か所に太陽熱給湯システム「ReTerra」を寄贈することを発表しました。
→ 詳しくはこちら:七尾市へのReTerra寄贈についてのお知らせ

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