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フェーズフリーとは?備えない新しい防災の形
9月は「防災月間」として、非常食や飲料水、防災バッグなどの備えを見直す機会が増える時期です。こうした「もしもの時のために、特別なものを用意しておく」という備え方は、防災の基本として今も大切な役割を持っています。その一方で、近年「フェーズフリー」という考え方も少しずつ知られるようになってきました。今回は、この考え方についてわかりやすくご紹介します。
フェーズフリーとは?
「フェーズ(Phase)」とは、英語で「状態」や「局面」を意味する言葉です。フェーズフリーとは、「日常時」と「非常時」という2つの状態を、必要以上に分けて考えないようにしようという発想を指します。
この考え方を推進している一般社団法人フェーズフリー協会は、フェーズフリーについて次のように説明しています。
つまり、普段の生活の中で使っているモノやサービスが、災害が起きた時にもそのまま役立つようにしておく、という発想です。防災用品を「別に用意する」のではなく、普段使っているものに「非常時にも役立つ価値」を見出す、という点が特徴です。
フェーズフリーという言葉と考え方は、社会起業家の佐藤唯行氏が2014年に提唱したもので、2018年には一般社団法人フェーズフリー協会が発足しています。災害の記憶がいつしか薄れ、備える習慣が定着しないまま同じような被害を繰り返してしまう、という課題意識が、この考え方が生まれた背景にあります。
フェーズフリーは、防災用品を「別に用意する」発想ではなく、普段使っているものに非常時の価値を見出すという発想です。
従来の「備える防災」と何が違う?
非常食や防災バッグ、簡易トイレ、非常用ライトといった防災用品は、いざという時に命を守る重要な役割を持っています。ただ、これらの多くは「普段はしまっておき、非常時だけ取り出して使う」という性質のものです。
フェーズフリーの考え方は、これとは少し違う角度からのアプローチです。「非常時のためだけに、特別に準備する」のではなく、「普段から使っているものが、結果として非常時にも役立つ」という状態を目指します。
| 従来型の防災 | フェーズフリー | |
|---|---|---|
| 使うタイミング | 非常時のみ | 日常時も非常時も |
| 普段の状態 | しまっておく | 日常の中で使っている |
| 代表的なもの | 非常食、防災バッグ、簡易トイレ、非常用ライト | 普段使いの中に備えの価値があるモノ・サービス |
誤解のないようにお伝えしたいのは、フェーズフリーは従来の備蓄や防災用品を否定するものではないということです。非常食や飲料水の備蓄には、フェーズフリーでは代替できない重要な役割があります。フェーズフリーは、こうした従来の備えに加えて、防災の選択肢を広げる考え方として捉えるのが適切です。
身近な暮らしにも「フェーズフリー」はある
実は、フェーズフリーという言葉を知らなくても、すでに似たような考え方を暮らしに取り入れている方は少なくありません。たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 普段から持ち歩いているモバイルバッテリー
- 食べながら買い足していくローリングストック食品
- キャンプなどのアウトドアでも、停電時の照明としても使えるランタン
- 普段の外出でも履き慣れている、歩きやすいシューズ
これらに共通しているのは、「災害のためだけに買ったものではない」という点です。普段の生活の中で自然に使っているうちに、結果として非常時にも役立つ。それが、フェーズフリーの考え方が目指す状態です。
「防災のために買う」から「普段使うものが備えにもなる」へ
防災というと、「災害が起きた時のために、特別に何かを準備すること」というイメージを持つ方が多いかもしれません。フェーズフリーは、この捉え方を少し広げ、「毎日の暮らしの中に、自然に備えが存在している状態」を目指す考え方だといえます。
実際、この考え方は行政の防災施策においても注目されています。内閣府は2026年6月、「フェーズフリー等促進検討会」を新たに設置し、同年6月3日に第1回会合を開催しました。防災の取り組みを特別なものとしてではなく、日常の延長として自然に実践できる社会の実現を目指す議論が進められています。
内閣府「フェーズフリー等促進検討会」(2026年6月3日 第1回会合)。防災を日常の延長として実践できる社会の実現を目指す議論が進められています。
こうした動きも踏まえながら、まずは難しく考えすぎず、「家にあるものの中に、すでにフェーズフリーな役割を果たしているものはないか」を、一度見直してみることから始めてみるのはいかがでしょうか。
実は住宅設備にもフェーズフリーという考え方がある
こうしたフェーズフリーの考え方は、住宅設備の分野にも広げて考えることができます。一例として、マルヤス工業の太陽熱給湯システム「ReTerra(リテラ)」をご紹介します。
ReTerraは、普段は太陽の熱を集めて給湯に必要なエネルギーを補う設備です。屋根の集熱器で集めた熱を、200Lの貯湯タンクへ届け、日々の暮らしの中でお湯として使われます。
このタンクには、普段使わない時にも常時一定量の水が蓄えられています。断水が発生した場合には、このタンク内の水を災害時の生活用水として利用することができます。
つまりReTerraは、「災害が起きた時だけ使う防災設備」ではなく、「普段から使っている住宅設備に、非常時にも役立つ価値がある」という設計になっています。フェーズフリーの考え方で見ると、日常と非常時の双方に価値を持つ設備のひとつと考えることができるでしょう。
※ReTerraは、一般社団法人フェーズフリー協会によるフェーズフリー認証を取得した商品ではありません。ここでは、フェーズフリーという考え方に照らした場合の設備の性質についてご紹介しています。
ReTerraが目指しているのは、「お湯を気にしない毎日」という暮らしです。これは、お湯を無制限に使えるということではなく、「今日は水でいいか」「ここでお湯を使うのはもったいない」といった、日々の小さなためらいが少し減り、お湯を使うという選択肢が自然に広がることを意味しています。
普段の暮らしを心地よくするものが、もしもの時にも暮らしを支えてくれる。フェーズフリーという考え方と、ReTerraが目指す暮らしのあり方には、そんな共通点があるのかもしれません。今日ご紹介した内容が、ご自宅にあるものを少し見直すきっかけになれば幸いです。
なお、マルヤス工業株式会社は、日経トレンディ2026年9月号にReTerraの広告を掲載しています。詳しくはこちらのお知らせをご覧ください。
- 一般社団法人フェーズフリー協会「フェーズフリーとは」 https://phasefree.or.jp/phasefree.html
- 内閣府「フェーズフリー等促進検討会」 https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/phase_free/index.html
- フェーズフリー認証(一般社団法人フェーズフリー協会) https://cf.phasefree.net/